「ヘチマ」 (8月15日)


終戦記念日になるとヘチマの花を思い出すのです。

終戦のとき私は兵隊で、富士山の裾野の滝が原という所に駐屯していました。
公用で御殿場の町に出掛けていたのですが、昼に重大な放送があるから間に合う ように帰って来いと言われていたのです。
出先での用事が長引いて、昼までには 戻れそうもないたと道を急いでいるとき、とある民家の前に大勢人が集まってい るのを見掛け、一緒に佇んで天皇の放送を聞いたのです。

つい数日前に戦地に向かった大勢の戦友たちが死んだという報せがあったばかり で、たった数日の違いで…と思うと涙が止まりませんでした。

その民家の庭に、ヘチマの花が満開だったのです。
黄色いヘチマの花ひとつひと つが戦友の顔になって、何か語りかけているようでした。


ヘチマ【糸瓜・天糸瓜】
Luffa cylindrica ウリ科ヘチマ属

千葉県大多喜町で(1996年 8月)Photo by K.Iozawa

熱帯アジア原産の蔓性1年草。

巻き髭で他物に絡みついて延びる。
葉は掌状 で浅く3〜5裂している。

夏、黄色い5弁花を開く。
雌雄同株。

果実は太い棍棒状で、網目になった強靱な繊維組織があり、これを浴用や台 所用のタワシ替わりに使う。
また、茎から取った水(へちま水)は昔から化 粧水として使われた。

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