「ソメイヨシノ」 (3月30日)


隣町(千葉県勝浦市)で桜の開花宣言がありました(編者注:1996年の話です)。 ほぼ平年並みのようです。

日本の国花は「菊」または「桜」とされていますが、菊も桜もあるグループの植 物の総称で、特定の種を指すものではありません。
“花は桜木人は武士”などと 言われるように象徴的な言葉として使われることも多いのですが、植物学的には 単に「サクラ」と呼ぶ植物はないのであって、植物図鑑でもサクラという名で特 定の植物を扱うことはしていないのが普通です。
植物学的にはバラ科サクラ属と いう分類がありますが、この中には桜とは呼ばない梅や桃も含まれますので、 「桜」はサクラ属の総称というわけでもないのですね。

東京で言えば上野公園や千鳥ガ淵などで花見を楽しむ桜は、ソメイヨシノという 種類です。
また花の名所、奈良の吉野山の桜は殆どがヤマザクラですし、俗に八 重桜とか牡丹桜とか言われる八重咲きの品種を含む園芸種を総括してサトザクラ という名が与えられています。

桜の開花宣言に使われるソメイヨシノは江戸末期に駒込の染井という所に住む植 木職が、エドヒガンとオオシマザクラを交配させて作り出したものといわれてい ます。
今では日本各地でもっとも普通に見られる桜になりました。
葉の出ないう ちに一斉に開花して美しく、成長は早いのですが、病虫害に侵されやすく、木の 寿命が短いのが欠点です。

1912年にソメイヨシノの他に11種のサトザクラを交えた3,000本の桜がアメリカ に贈られ、ワシントンのポトマック河畔に植えられたのはよく知られた話ですが、 今残っているのはカンザンという品種のサトザクラと、ソメイヨシノだけだそう です。


ソメイヨシノ【染井吉野】
Praunus yedoensis バラ科サクラ属

京都府京都市・哲学の道沿いにて Photo by M.Takeda

高さ10m に達する落葉高木。

葉は長さ 5〜10cm の楕円形で薄く、葉脈が目 立ち、縁には鋭い鋸歯がある。

花は葉の出るより先に開き、初め淡紅色で後 に白くなる。

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